公務員は安定していると言われる一方で、「将来の年金だけでは不安」と感じている方は、少なくありません。今や人生100年時代ともいわれ、長生きするほどに老後資金の必要性が高まっています。しかし、公務員は法律上、副業が厳しく制限されているため、何でも自由に収入源を増やすことが簡単ではありません。
この記事では、公務員としての信頼を守りながら駐車場経営で副収入を得るための条件と具体的な方法、注意点まで詳しく解説します。公務員という立場を守りつつ、賢く資産を増やしたい方は、ぜひ最後までお読みください。
まず、公務員の副業禁止規定について正しく理解しておく必要があります。国家公務員法第103条・104条や地方公務員法第38条などでは、公務員の副業や兼業を原則禁止しています。これは、公務員が本来の職務に専念し、公正さと中立性を保つためのルールです。副業が認められていないのは、単に「収入を増やすこと」が問題なのではなく、本業への影響や、公務員としての信頼性が損なわれることを防ぐためです。
ただし、すべての副業が絶対にダメというわけではありません。「資産運用」として認められる範囲、つまり本業に支障をきたさず、営利事業とみなされない規模であれば、例外的に副業や兼業が可能です。
この「資産運用」と「事業的規模」の線引きが、公務員の方にとって極めて重要な判断基準となります。
公務員が駐車場経営を行うには、法律上の明確な条件を守る必要があります。この章では、なぜ条件が定められているのか、その背景と具体的な基準について見ていきましょう。
「人事院規則14-8(営利企業の役員等との兼業)の運用について」によると、駐車場経営が「資産運用」として認められるのは、駐車場台数が10台未満、年間賃貸収入が500万円未満の場合、建築物である駐車場又は機械設備を設けないことです。この基準は、営利目的の事業とみなされる規模を超えないために設けられています。もしこの基準を超えると、事業性が強いと判断され、公務員としての本業に支障が出るリスクや、職務の公正性が疑われる恐れがあります。
「500万円」という金額は経費控除前の総収入で判断されます。たとえば、月極で1台あたり月3万円の駐車場を9台運営した場合、年間324万円となり、基準内であれば安全に運営できます。
この基準は、規模が大きくなるほど本業に支障が出る可能性が高まるため、設けられています。また、建築物としての駐車場(立体駐車場や屋根付きの駐車場)や、機械設備(ロック板やゲート、ターンテーブルなど)を設けた駐車場の場合は、単なる土地賃貸ではなく「事業目的」と見なされるため、原則として公務員の副業規制に抵触しますので注意が必要です。
もう一つ重要なのが、「管理業務を自分で行わないこと」です。公務員自身が契約や集金、清掃などの管理業務を直接行うと、「自営による事業」とみなされ、副業禁止規定に抵触するリスクが高まります。これは、公務員が本業以外の業務に時間や労力を割くことで、職務専念義務違反と判断される可能性があるためです。
そのため、必ず信頼できる管理会社に運営を委託し、自身は実質的な運営に関与しないことが、公務員としての立場を守るうえで必要です。管理委託料は通常、収入の5~10%程度ですが、これを惜しんで自主管理を選ぶと、結果的に大きなリスクを背負うことになります。
また、管理委託よりおすすめなのが「一括借り上げ方式」です。これは、駐車場運営会社が土地を一括で借り上げ、オーナーには毎月一定額の賃料が支払われる仕組みです。運営会社がすべての契約・集金・設備管理・トラブル対応まで担うため、オーナー本人は一切運営に関与することなく収入を得ることができます。
この方式であれば、営利事業への実質的な関与がないため、公務員の副業規制にも抵触しにくく、勤務先に確認をとった上で運用すれば安心して継続できる副収入源になります。
また、一括借り上げ方式の場合、駐車場の稼働率や集客の心配は不要です。利用状況に関わらず一定の収入が保証されるため、安定性・リスク管理の両面において、「本業に集中したい」「手間やリスクは極力減らしたい」という公務員の方には、管理委託よりも一括借り上げ方式の方が適しているといえるでしょう。
相続で土地を取得し、駐車場として運用する場合も、上記の規模や一括借り上げ方式を選ぶ等をすれば原則問題ありません。相続が理由の場合は認められやすい傾向もありますが、必ず事前に勤務先に相談し、必要な手続きを踏むことが重要です。
公務員が副収入を得る手段として駐車場経営を選ぶ理由は多くあります。ここでは、公務員と駐車場経営がなぜ相性が良いのか、具体的なメリットを詳しく見ていきます。
公務員は副業規制が厳しいため、規模が小さい資産運用が求められます。駐車場経営は初期費用が比較的少なく、土地があればアスファルト舗装や簡易整備だけで始められるため、適しています。無理なく小規模から始められる点が公務員にとって大きな魅力です。
公務員は「安定した収入」「長期雇用」「社会的信用」の観点から、金融機関の審査において高い評価を受ける傾向にあります。
そのため、小規模な融資でも低金利で借りやすく、自己資金が少なくても始めやすいのがメリットです。
本業に集中しながら、手間なく運用できるため、公務員の生活スタイルと非常に相性が良いです。一括借り上げ方式を利用すれば、稼働率に関係なく安定収入を得ることができ、副業禁止規定にも抵触しにくくなります。
メリットが多い一方で、当然ながらデメリットやリスクも存在します。この章では、収益面や立地選びのリスク、税金面の注意点など、失敗を防ぐために知っておくべきことを整理します。
まず、公務員が駐車場経営を行うためには10台未満・500万円未満という制限があるため、収益の上限が決まっており、大きな利益は望みにくいのが現実です。特に、都心部以外では1台あたりの賃料が低く、十分な収入を得るのが難しい場合もあります。
また、立地や需要を見誤ると、空きが増えて収益が減少するリスクもあります。駐車場経営は立地がすべてと言っても過言ではありません。すでに競合が多いエリアや、需要が少ない場所では、稼働率が低下し、思ったような収益が得られないこともあります。
駐車場経営には、土地の整備費用や管理委託料、広告費などのランニングコストも発生します。これらのコストを正確に把握し、収支計画を立てておかないと、思ったほど利益が残らないこともあります。
また、固定資産税の増額や確定申告の手間など、税務に関する負担も避けられません。公務員の場合、副業規制との兼ね合いもあるため、誤った処理をしてしまうと大きなリスクにつながる可能性があります。
上記のようなリスクを下げるために税理士や駐車場経営の専門業者へ相談することをおすすめします。
駐車場経営を始めるなら、税金や申告の正しい知識は欠かせません。ここでは、公務員が副収入として得た場合の税務処理や確定申告の注意点をまとめました。
駐車場経営で得た収入(給与以外の収入)が年間20万円を超える場合は、必ず確定申告が必要になります。これは公務員であっても例外ではありません。また、住民税の納付方法については「普通徴収」を選択することで、副業分の住民税決定通知書は本人に送付されるため、勤務先に副収入の存在が知られにくくなります(特別徴収では職場を通じて天引きされるため、副収入の存在が発覚するリスクがあります)。
そして、青色申告を活用すれば最大65万円の控除も受けることができますが、申告内容に誤りがあると税務署から指摘を受けることもあるため、正確な記帳と申告が求められます。
駐車場経営にかかる税金は、固定資産税が最も大きな支出となることが多い項目です。住宅用地として利用していた土地を駐車場にする場合は、住宅用地の特例が外れ、固定資産税が上がるケースがあります。さらに、所得税や住民税、場合によっては消費税や償却資産税も発生するため、税務の知識は欠かせません。
駐車場経営の所得区分は、管理責任の有無や事業的規模かどうかによって「不動産所得」「事業所得」「雑所得」に分類されます。公務員の方が駐車場経営に安心して取り組むためには、管理や運営に関与せず、土地を貸すだけの一括借り上げ方式を選ぶことで、不動産所得としてシンプルに処理できる可能性が高くなります。
ただし、実際の所得区分や課税対象は、土地の状況や契約条件によって異なる場合があります。誤った申告を防ぐためにも、事前に税理士など専門家に相談することが重要です。
駐車場経営に関わる税金については以下の記事で詳しく解説していますので、ご参考にしてください。
関連記事:駐車場経営にかかる税金とは?種類や計算方法をわかりやすく解説
公務員が駐車場経営で副業を行う際は、「なぜそのルールがあるのか」「どんなリスクがあるのか」「どんな手続きが必要なのか」を一つずつ理解し、慎重に準備することが必要です。「10台未満・年間賃貸収入500万円未満・建設物、機械設備なし・管理委託」の条件を守れば、駐車場経営ができる可能性が高いと考えられます。さらに一括借り上げ方式を採用することで、土地を貸すだけの形態となり、設備の所有・管理は運営会社が行うため、公務員自身が営利事業に関与していると見なされず、副業禁止規定にも配慮しやすくなります。
NTTル・パルクでは、一括借り上げ方式による駐車場経営サービスを提供しており、設備管理・運用はすべてお任せ可能です。「副業規定に配慮しながら土地を活用したい」という公務員の方に適した仕組みです。立地条件や土地の形状に応じた最適なプランをご提案していますので、まずはお気軽にご相談ください。